選び方

在宅介護の限界、どこで施設を考えるか

夜中に何度も起こされる。トイレが間に合わなくなってきた。何度説明しても、同じことをまた聞かれる。仕事に出ても、家のことが頭から離れない。

そんな日が続いたある日、ふと「もう限界かもしれない」という言葉が浮かぶ。そして、そんな言葉を思い浮かべた自分に驚いて、落ち込む。。。──在宅で介護をされているご家族から、私たちがよくうかがう話です。

大将が、先にひとつだけお伝えしておきたいことがあります。この記事では、「こうなったら施設です」という線引きはしません。介護の限界は、要介護度でも、介護年数でも、睡眠時間でもはかれない。大将は、そう思っています。同じ状態でも続けられるご家庭があり、続けられないご家庭がある。その判断は、ご家族と、担当のケアマネジャー(ケアプランを作る介護支援専門員)をはじめとする専門職が、一緒に決めていくものです。

この記事でお伝えするのは、①在宅が続かなくなるときに何が起きているのか ②在宅を続けるために使える手立て ③そのうえで施設を考えるきっかけになる場面、の3つです。この順番には、大将なりの意味があります。施設の話をする前に、まだ試していない手立てが残っていることが少なくないからです。

在宅介護が続かなくなるのは、気持ちの問題ではありません

「自分の頑張りが足りないんです」と話されるご家族は、本当に多いです。でも、行き詰まるときには、たいてい共通した理由があります。愛情や努力の量とは、別のところに原因があるんです。

起きていること 続かなくなる理由
夜間の対応(何度も起きる・昼夜が逆転する) 介護者がまとまって眠れなくなる。睡眠不足は判断力にも体調にも影響します
排泄の介助 回数が多く、時間帯を選べない。介護者側の心理的な負担も大きい部分です
認知症にともなう行動(同じ質問の繰り返し、外に出て戻れない、拒否) 対応に終わりが見えず、24時間気を張った状態が続きます
介護者自身の不調 腰痛・持病・介護者自身の加齢。介護は身体を使う仕事です
仕事との両立 平日日中にしか進まない手続きが多く、休みが削られていきます
介護を担う人が1人に偏る 相談相手がいないまま、判断も実務も1人に集中します

このうち、仕事との両立については介護離職を考える前に知ってほしい制度と相談先で制度面を詳しく整理しています。また、介護を担う人が偏る形は、80代の親と50代の子 — 相談できる窓口子どもが介護を担っているとき、どこに相談するかのように、世代によって別の困りごとを生みます。

大事なのは、これらはどれも「家族の頑張り」で解決する種類の問題ではないということ。眠れない状況は、気合いでは変わりません。腰痛が、精神論で治ることもありません。だからこそ、外の手を入れる余地がどれだけ残っているか。まず、そこを確認するんです。

在宅を続けるために、使える手立てを先に並べる

介護保険には、自宅での暮らしを支えるためのサービスが、ちゃんと用意されています。すでに一部を使っておられる方でも、「これは知らんかった」というものが混じっていることがあります。

サービス できること
訪問介護(ホームヘルプサービス) ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの介助(身体介護)や、調理・洗濯・掃除・買い物などの援助(生活援助)を行います
訪問看護・訪問入浴介護 看護職による健康管理や、自宅での入浴を支えます
通所介護(デイサービス) 日中に通っていただく形。介護者が離れられる時間が生まれます
短期入所生活介護(ショートステイ) 自宅での生活が一時的に難しいときに短期間入所するサービス。松山市は「自立した生活の改善、心身機能の維持、家族の介護負担の軽減など」を目的として案内しています
福祉用具貸与・購入費支給 ベッド・手すり・車いすなどを借りる、または購入費の支給を受ける
住宅改修費支給 手すりの取付け、段差の解消などの工事に対する支給

なかでも見落とされやすいのが、ショートステイと住宅改修。この2つだと、大将は感じています。

ショートステイは「特別な事情があるときだけのもの」と思われがちですが、松山市の案内には家族の介護負担の軽減が目的として明記されています。介護者が休むために使ってよいサービスです。ただし利用日数には目安があり、松山市は「要介護認定等の有効期間のおおむね半数を超えないようにしなければならない」としつつ、心身の状況やご家族の意向によりこの目安を超える利用もありうると案内しています。また、連続して30日を超えた分は全額自己負担となります。

住宅改修は、介護保険で支給限度基準額20万円までが対象です。対象となるのは、①手すりの取付け ②段差の解消 ③床・通路面の滑り防止のための材料変更 ④引き戸等への扉の取替え ⑤洋式便器等への便器の取替え ⑥これらに付帯して必要となる工事の6種類です。給付の限度額は利用者負担割合により変わり、1割の方で18万円、2割で16万円、3割で14万円が目安です。改修前と改修後にそれぞれ手続きが必要で、着工前にケアマネジャーへ相談することが前提になっています。先に工事をしてしまうと支給を受けられない場合があるため、順番にご注意ください。

これらをどう組み合わせるか。それを一緒に考えるのが、ケアマネジャーの仕事です。「限界かもしれない」と感じ始めた、その時点でご相談いただければ、プランを組み直せる余地があります。まだ担当がついていない、要介護認定も受けていない、という場合は、松山市で介護保険を申請するにはから始めていただくのが早道です。

そのうえで、施設を考えるきっかけになる場面

手立てを尽くしてもなお、暮らしの形を変えることを考える時期は、訪れます。断定はできません。ただ、ご家族が相談に来られるきっかけとして、次のような場面がよく挙がります。

  • 夜間の対応が毎晩続き、介護をされている方の睡眠が確保できなくなっている
  • 介護をされている方自身が入院・手術・治療を必要とする状態になった
  • 自宅の構造上、移動や入浴が安全に行えなくなってきた
  • 一人で外に出て戻れないことがあり、目を離せる時間がなくなった
  • 医療的な処置の必要性が増し、家庭での対応が難しくなってきた
  • ご本人と介護者の関係が、以前のように穏やかに保てなくなってきた

いずれも「何回起きたら」という基準はありません。同じ状況でも、支える人数や住まいの条件、ご本人の性格によって、答えは変わる。ですから、これらの場面が見え始めたら、決断ではなく相談を先に置いてください。ケアマネジャーや地域包括支援センターは、在宅を続けるための選択肢と、住まいを変える選択肢の、両方を並べて説明することができます。

なお、住まいを変えるという選択をした場合でも、施設の種類によって、暮らし方も費用も大きく変わります。グループホームを検討される場合は、グループホーム見学のチェックリストもあわせてご覧ください。

「施設に入れる」は、見捨てることではありません

ここが、大将がいちばんお伝えしたいところです。

「親を施設に入れるなんて、見捨てるようで」。ご家族から、そんなお気持ちをうかがうことがあります。そのお気持ちを、大将は軽く扱いたくない。長く一緒に暮らしてこられたご家庭ほど、その葛藤は深いのだと思うんです。

一方で、事実として申し上げられることもあります。介護保険の在宅サービスは、そもそもご家族だけで抱えることを前提に設計されていません。訪問介護も、デイサービスも、ショートステイも、「暮らしを外から支える」ために制度に組み込まれたもの。人手を借りることは、制度の想定どおりの使い方であって、例外的な逃げ道ではないんです。

そして、住まいを変えたあとも、ご家族の役割がなくなるわけではありません。会いに行く。様子を見る。好きなものを持っていく。職員に、その人の人となりを伝える。介護の実務から離れたことで、かえって穏やかに向き合えるようになった、とおっしゃるご家族もいます。逆に、施設に移ってからも気持ちが整理できないままの方もいらっしゃる。どちらが正しい、という話ではありません。

大将が、ずっと大切にしている言葉があります。「生活の中心は、家のはず」。デイサービスもグループホームも、その人の暮らしを施設の都合に合わせる場所ではなく、暮らしの続きを支える場所でありたい。在宅を尽くすことと、住まいを変えることは、対立するものではない。大将は、そう考えています。

松山では、どうなっているか

松山市には、在宅で介護を続けるご家族を支える市の事業があります。介護保険のサービスとは別枠のものも含まれます。

徘徊高齢者家族支援サービス事業は、認知症の症状により行方が分からなくなることのある高齢者について、小型の電波発信機を貸与し、受信センターが位置を検索してご家族に知らせる仕組みです。対象は「市内に住所を有するおおむね65歳以上の認知症高齢者を居宅において介護している家族」。費用は生活保護世帯が無料、所得割非課税世帯が月500円、所得割課税世帯が月1,000円です。申請窓口は長寿福祉課 基幹型地域包括支援センター(松山市二番町四丁目7-2 別館2階、電話 089-948-6949)です。

このほか松山市は、松山市認知症高齢者SOSネットワーク(おまもりネット)認知症初期集中支援チーム認知症カフェの情報、認知症の進み方と使えるサービスをまとめた**認知症ケアパス(まつやまオレンジぶっく)**などを案内しています。ひとり暮らしの高齢者向けには、独居高齢者みまもり員設置事業や緊急通報体制整備事業もあります(長寿福祉課 電話 089-948-6410)。

住宅改修について相談したい場合の窓口は、松山市介護保険課 介護給付担当(電話 089-948-6885・6924)です。どこに聞けばよいか分からないときは、市のコールセンター(電話 089-946-4894、午前8時〜午後7時)から案内を受けることもできます。

制度の内容や金額は改定されることがあります。ここに挙げた数字はいずれも目安として扱っていただき、実際の適用は必ず窓口でご確認ください。

まとめ — 最初の一歩は、ケアマネジャーへの相談です

  • 在宅介護の限界に、数値の線引きはありません。判断はご家族と専門職が一緒に行うものです
  • 続かなくなる理由は、夜間対応・排泄・認知症にともなう行動・介護者自身の不調・仕事との両立など、頑張りでは解決しにくいところにあります
  • 施設を考える前に、訪問介護・デイサービス・ショートステイ・福祉用具・住宅改修という手立てが残っていないかを確認します
  • 松山市には、徘徊高齢者家族支援サービスをはじめ、在宅を支える市独自の事業があります
  • 迷いが出てきた段階で、ケアマネジャー、または地域包括支援センターにご相談ください。決めてから相談する必要はありません

「限界かもしれない」と感じたこと。それは、うしろめたいことでは、決してありません。むしろ、状況が変わりつつあるという、大事な合図です。その合図を、どうか一人で抱えたままにしないでいただきたい。大将は、そう思っています。

私たち「介護の大将」は、松山市内でグループホーム・デイサービス・居宅介護支援を運営しています。在宅を続けるためのご相談も、住まいを変える場合のご相談も、どちらもおうかがいします。大将がずっと軸に置いているのは「快」という一文字。介護は、こちらが「してあげる」ものではなく、その方の反応をいただいて「させていただく」もの。だから、答えを押しつけることはしません。ご本人とご家族にとっての快がどこにあるのか、一緒にさがすところから始めます。実際の雰囲気は、見ていただくのがいちばん早いと思います。

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出典: 松山市 訪問介護(ホームヘルプサービス) / 松山市 短期入所生活介護(ショートステイ) / 松山市 住宅改修費の支給・『住宅改修の手引き』 / 松山市 徘徊高齢者家族支援サービス事業 / 松山市 認知症高齢者の支援 / 松山市 高齢者やその家族向けの事業(いずれも2026年7月確認)

まずは、見学にお越しください。

どの施設が合うのか、費用はどれくらいか。決めていない段階のご相談で結構です。お電話でもフォームでもお受けします。

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