不安

子どもが介護を担っているとき、どこに相談するか

祖父母の介護が始まってから、中学生の子が毎朝、洗濯と朝ごはんを引き受けるようになった。学校から帰ればすぐに見守りに入り、宿題は夜中になる——。そんな家庭は、決して特別ではありません。

こういうお話をうかがうと、「うちの子に負担をかけている、親として情けない」と、ご自分を責めてしまう方がいらっしゃいます。。。大将は、その言葉こそ、聞いていていちばんつらいんです。子どもが家族のケアを担うようになるのは、親御さんの怠慢が原因ではありません。支援が届いていない、ただそれだけのことだと大将は思っています。届け方さえ分かれば、状況は動きます。

この記事では、ヤングケアラーとは何か、周囲の大人が気づけること、どこに相談できるかを整理して、あわせて祖父母の介護が発端の場合に負担を減らしていく道筋をお伝えします。制度の運用は変わることがありますので、実際のご相談では、窓口で最新の内容をご確認ください。

ヤングケアラーとは — 法律ではどう定められているか

「ヤングケアラー」という言葉は、長く行政の通知や調査の中で使われてきましたが、2024年(令和6年)6月の法改正で、子ども・若者育成支援推進法に支援の対象として明記されました。同法の基本理念(第二条第七号)は、次のように定めています。

修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者その他の社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者に対しては、その困難の内容及び程度に応じ、当該子ども・若者の意思を十分に尊重しつつ、必要な支援を行うこと。 (子ども・若者育成支援推進法 第二条第七号)

ここで大将がいちばん大事だと思うのは、法律が問題にしているのが「介護をしていること」そのものではない、という点です。条文は「過度に行っている」と書いています。こども家庭庁も、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と説明しています。

家族を手伝うこと、支えること自体は、けっして否定されるものではありません。おばあちゃんの背中をさする、お母さんの代わりに買い物に行く——そうした行いは、その子のやさしさそのものです。大将は、そこは胸を張っていいと思うんです。問題は、年齢や成長の段階に見合わない量のケアが、毎日・当たり前のこととして続いていること。そのために遊ぶ時間、勉強する時間、友だちと過ごす時間が削られ、進路の準備が後回しになってしまう。切り分けるべきなのは、ここです。

そしてもうひとつ。ケアは「身体を支えること」だけではありません。次のような役割も、すべてケアに含まれます。

ケアの種類 具体的な例
身体的な介護 入浴・トイレ・移動の介助、服薬の見守り
家事 食事づくり、洗濯、掃除、買い物
きょうだいの世話 幼い弟妹の送り迎え、食事や入浴の世話、宿題をみる
見守り 目を離せない家族のそばにいる、外出を見守る
通訳・手続き 日本語や耳が不自由な家族の代わりに話す、書類を書く
感情面のケア 家族の不安や愚痴を聞き続ける、気持ちを支える役に回る
家計を支える アルバイトで生活費を担う

とくに「見守り」と「感情面のケア」は外から見えにくく、本人も家族もケアだと認識していないことが多いものです。「ただそばにいるだけ」でも、目が離せない状態が続けば、それは拘束された時間です。

周囲の大人が気づけるサイン(ただし、決めつけない)

ヤングケアラーは、自分から「助けて」と言いにくい立場にあります。家のことを話すのは恥ずかしい、家族を悪く言うようで嫌だ、そもそもこれが普通だと思っている——理由はさまざまです。だからこそ、周りの大人が気づけるかどうかが入口になります。大将は介護の仕事の中で、相手が言葉にしない小さなサインに気づくことを、ずっと大切にしてきました。それは家庭の中でも同じだと思うんです。学校や地域で見えやすいのは、次のような変化です。

  • 遅刻・早退・欠席が増える(とくに朝と夕方に集中する)
  • 提出物が出せない、宿題が終わっていない日が続く
  • 授業中に強い眠気がある、疲れが抜けていない様子がある
  • 部活や放課後の活動をやめる、友だちと遊ぶ機会が減る
  • 家庭の話題を避ける、家のことを聞かれると口が重くなる
  • 年齢のわりに家事や手続きに慣れている

ただし、これらのサインが出ているからヤングケアラーだ、と決めつけないでください。 同じ変化は、体調・友人関係・学習面の悩みなど、まったく別の理由でも起こります。決めつけて問い詰めることは、その子が抱えているものを隠す方向に働いてしまいます。

大人ができるのは、「あなたはヤングケアラーでしょう」と名づけることではなく、気になったことを、その子を責めない形で誰かに共有することです。担任の先生に一言伝える、スクールソーシャルワーカー(学校と福祉制度をつなぐ専門職)に相談する。それだけで、支援の側から様子を見に行く経路が開きます。

そして、もしこの記事を読んでいるのがご本人なら——大将から、ひとつだけ。家族を助けてきたことは、責められることではありません。あなたは、なんにも悪くないんです。誰かに話したからといって、家族が悪く言われたり、すぐに引き離されたりするわけでもありません。相談は、「家族を守るための手段を増やすこと」。ひとりで背負い続けなくて、いいんですよ。

どこに相談できるか

相談先はひとつではありません。入りやすいところから入って構いません。

相談先 どんなときに 特徴
学校(担任・養護教諭) まず身近な大人に話したい いちばん近く、日常の変化に気づきやすい
スクールソーシャルワーカー 家庭の事情が絡んでいる 学校と福祉制度をつなぐ専門職
こども家庭センター 家庭全体の支援が必要 市町村に置かれる、子どもと家庭の相談拠点
地域包括支援センター 祖父母など高齢の家族の介護が発端 高齢者支援の総合窓口。保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーがチームで対応
ケアマネジャー すでに介護保険を使っている ケアプランの見直しで負担配分を変えられる

「学校に相談しましょう」で終わる案内をよく見かけますが、大将は、それだけでは足りないことがあると思っています。学校が動けるのは、主に子ども本人の環境まで。ケアの原因になっている高齢の家族のほうに支援が入らなければ、負担そのものは減らないからです。

祖父母の介護が発端なら、介護保険から負担を減らせる

ここは、現場に立つ大将から、いちばんお伝えしたいところです。

祖父母の介護が子どもの負担の発端になっている場合、入口は「子ども側」だけではありません。介護保険の側から入れます。 地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口ですが、相談を受けるときに見るのはご本人だけではなく、その方を支えている世帯全体です。「誰がどのケアを担っているのか」を聞き取っていく中で、子どもが担っている部分が見えてきます。介護は、その家の暮らし全体とつながっている——大将は現場で、いつもそう感じています。

祖父母の介護から子どもの負担を減らす流れ。気づく、地域包括支援センターに相談、要介護認定の申請、ケアプランの作成、負担が分かれる、の5段階

要介護認定(どのくらい介護が必要かを判定する手続き)を受けてサービスが使えるようになると、これまで家族が担っていた部分を、専門職が引き受けられるようになります。

  • デイサービスに通う日ができれば、日中の見守りが要らなくなる時間が生まれます
  • 訪問介護が入れば、入浴やトイレの介助を家族が全部背負わなくてよくなります
  • ショートステイを使えば、受験前など、まとまった時間を確保することもできます
  • 在宅での介護が難しくなってきた場合には、グループホームなど住まいを移す選択肢も検討できます

どの組み合わせが合うかはご本人の状態と家庭の事情で変わりますので、ケアマネジャーと相談しながら決めていきます。関連する記事もあわせてご覧ください。

松山では、どうなっているか

松山市には、ヤングケアラーの専門の相談窓口があります。

ヤングケアラーほっとらいん(松山市 こども家庭センター こども相談課(築山))

松山市の案内によれば、この窓口ではヤングケアラー・コーディネーターが相談に対応します。「家族のケアが大変で、自分の時間が取れない」といった内容を受け付けており、ご本人からでも、周囲の大人からでも相談できます。

愛媛県も、県のヤングケアラー支援のページで、子ども・若者やご家庭が使える相談先を案内しています。「親子のための相談LINE」は月曜〜金曜の10時〜20時に無料・匿名で相談でき、中学生・高校生向けの「SNS相談ほっとえひめ」は火曜・木曜の18時30分〜21時30分に受け付けています。24時間つながる「いじめ相談ダイヤル24」(0120-0-78310)も、いじめに限らない悩みの入口として案内されています。

そして、祖父母の介護が発端であれば、お住まいの地区の地域包括支援センターが相談先になります。松山市には地域包括支援センターが市内に13か所、サブセンターが2か所設置されており、担当する圏域はお住まいの町名ごとに決まっています。松山市が公開している町名別の一覧表で、ご自宅の担当センターを確認できます。どこに電話すればよいか分からない場合は、松山市 介護保険課(TEL 089-948-6841・6925)でも確認できます。

窓口が複数あることに戸惑うかもしれませんが、順番は気にしなくて大丈夫です。話しやすいところに一本電話をすれば、必要な窓口へつないでもらえます。

まとめ — 家族を思う気持ちを、責める必要はありません

  • 2024年6月の法改正で、ヤングケアラーは子ども・若者育成支援推進法に支援の対象として明記されました
  • 問題は「介護をしていること」ではなく、年齢や成長に見合わない負担が長時間・常態化していることです
  • ケアには家事・きょうだいの世話・見守り・通訳・感情面の支えも含まれ、外からは見えにくいものです
  • 周囲の大人は、サインに気づいたら決めつけずに、担任やスクールソーシャルワーカーへ共有するところから
  • 松山市には「ヤングケアラーほっとらいん」(089-943-3300)があります
  • 祖父母の介護が発端なら、地域包括支援センターに相談し、介護サービスを入れることで負担を分け直せることがあります

家族を思う気持ちは、誰にも責められるものではありません。その気持ちを、ひとりで背負い続けなくていいように、制度も専門職も用意されています。

大将がずっと大事にしてきた言葉に、「快」があります。相手の立場に立って、その人の「心地いい」を考えること。もとは認知症ケアで教わった言葉ですが、その「相手」は、お客様お一人だけではないと大将は思っています。支えているご家族、その家の子どもたちまで含めた、暮らし全体です。チーム大将も、グループホーム・デイサービス・居宅介護の現場で、ご家族全体の暮らしを見ながらお手伝いをしています。

どのサービスが合うのか、実際の場所の雰囲気はどうなのか——気になることがありましたら、見学のご相談から、どうぞお気軽にお声かけください。


出典: こども家庭庁 ヤングケアラーについて / e-Gov法令検索 子ども・若者育成支援推進法(第二条第七号) / 松山市 ヤングケアラーほっとらいん / 松山市 こども相談課 / 愛媛県 ヤングケアラーについて / 松山市 地域包括支援センター(いずれも2026年7月確認)

まずは、見学にお越しください。

どの施設が合うのか、費用はどれくらいか。決めていない段階のご相談で結構です。お電話でもフォームでもお受けします。

見学のご相談 →

お電話 089-993-5737