介護離職を考える前に知ってほしい制度と相談先
朝、出勤前に親の様子を見に行く。日中に施設や病院から電話が入る。夕方に急いで帰り、休みの日は通院に付き添う。そんな日々が数か月続くと、多くの方が同じところに行き着きます。「このままでは仕事のほうが回らない。辞めるしかないのかもしれない」。
大将がいつも申し上げていることがあります。介護は、ある日突然始まる。 厚生労働省の「介護休業制度特設サイト」では、総務省「令和4年就業構造基本調査」をもとに、55〜59歳の10人に1人以上が介護に直面していると紹介されています。あなただけが手一杯になっているわけでも、段取りが下手なわけでもないんです。
この記事では、仕事を辞めるかどうかを決める前に知っておいていただきたい制度と相談先を、厚生労働省と松山市の公式情報にもとづいて整理します。
ひとつだけ、先にお伝えします。大将は「辞めるな」とは言いません。 事情はご家庭ごとに違います。仕事を離れることが最善のご家族も、当然いらっしゃると思っています。
ただ。。。知らないまま決めてしまうのは、もったいない。 使える制度と頼れる窓口を全部机に並べて、それでも辞めると決めたなら、それは立派なご判断だと思うんです。
「辞めるしかない」と感じるとき、何が起きているか
離職を考え始める時期は、多くの場合、介護そのものより段取りの負荷が高い時期と重なります。認定の申請、病院の付き添い、ケアマネジャー探し、施設の見学。これらは平日の日中にしか進まないことが多く、有給休暇があっという間に減っていきます。
しんどさの正体が「介護」ではなく「段取り」であること。案外、多いんです。そして段取りは、仕組みで減らせる余地があります。
そこで押さえておきたいのが、制度が想定している介護休業の使い方です。**介護休業は「自分が介護に専念するための休み」ではなく、「介護を続けられる体制をつくるための休み」**として設計されています。通算93日という日数も、介護を完結させる長さではありません。この期間にサービスを組み立て、相談先をつくり、両立できる形に整える。それが制度の考え方です。
大将ふうに言えば、「作業に追われる休み」ではなく「仕組みをつくる休み」。
離職を選んだ場合に起こりうることも、判断材料として並べておきます。収入が途切れること、社会保険の扱いが変わること、介護が長期化したときに再就職の条件が以前と同じとは限らないこと、介護以外の人間関係が細くなりやすいこと。脅かしたいのではありません。辞めたあとの生活は、介護が終わっても続きます。
仕事を続けながら使える制度を整理する
育児・介護休業法にもとづき、要介護状態の家族を介護する労働者が利用できる制度は、主に次のとおりです。いずれも会社の好意ではなく、法律で定められた制度です。 使わせてもらうのではなく、もともとある。
| 制度 | 内容 | 期間・回数 |
|---|---|---|
| 介護休業 | まとまった期間、仕事を休む | 対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割取得できる |
| 介護休暇 | 通院の付き添いなど、短い単位で休む | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日まで。1日単位または時間単位で取得可能 |
| 所定労働時間の短縮等の措置 | 短時間勤務/フレックスタイム/時差出勤/介護費用の助成のいずれか(会社が選んで設ける) | 連続する3年以上の期間で、2回以上利用できる |
| 所定外労働の制限 | いわゆる残業の免除 | 1回につき1か月以上1年以内。請求できる回数に制限はない |
| 時間外労働の制限/深夜業の制限 | 法定労働時間を超える残業、深夜の勤務を制限する | 上限や期間は制度ごとに定めがあります(厚生労働省の案内をご確認ください) |
対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母です。同居や扶養が条件ではありません。
正社員の方だけの話ではありません。パート・アルバイトなど有期雇用の方も対象になります。介護休業では、申出の時点で「休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと」が要件です。ただし労使協定がある場合、継続雇用1年未満の方や週の所定労働日数が2日以下の方などが対象外とされることがあります。ご自身が当てはまるかは、勤務先の就業規則か人事担当者にご確認ください。
収入のこと — 介護休業給付金
介護休業をためらう最大の理由は、やっぱり収入だと思います。制度の説明を聞いても「休んだら食えんやろ」で話が止まってしまう。ここで知っておいていただきたいのが、雇用保険の介護休業給付金です。
- 支給額: 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
- 要件: 雇用保険の被保険者で、介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月以上あること。この「1か月」は、賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある月を数えます(在籍していた月数とは限りません)。有期雇用の方には追加の要件があります
- 上限: 同一の対象家族について、93日を限度に3回まで
厚生労働省の案内では、休業中に賃金の支払いがない場合の目安として、月額20万円程度の方で支給額は月額13.4万円程度、月額30万円程度の方で月額20.1万円程度という例が示されています。あくまで例示であり、実際の金額は賃金や休業期間によって変わります。手続きは原則として勤務先を通じてハローワークへ行います。
満額ではありません。それでも、ゼロと67%はまったく別の話。「休む=収入が途切れる」と思い込んだまま決めてしまうのは、もったいないと大将は思うんです。
2025年4月から、会社側の義務も変わりました
「制度があるのは分かるけれど、うちの会社では言い出しにくい」。これも、よくうかがうお声です。言い出した瞬間に戦力外みたいな空気になったらどうしよう。。。口が重くなりますよね。
この点について、2025年(令和7年)4月1日から、育児・介護休業法の改正が施行されています。厚生労働省の案内によれば、事業主には次のような対応が求められています。
- 雇用環境の整備: 研修の実施、相談窓口の設置、取得事例の提供、制度利用促進の方針の周知のうち、いずれかの措置を講じること
- 個別の周知と意向確認: 介護に直面した旨を申し出た労働者に対し、介護休業制度等を個別に周知し、利用の意向を確認すること
- 早い段階での情報提供: 労働者が40歳に達する前後の期間に、介護休業制度・申出先・介護休業給付金について情報提供すること
- 介護休暇の要件緩和: 継続雇用期間6か月未満の労働者を対象外とする仕組みが廃止されました
- テレワーク等: 家族を介護する労働者がテレワーク等を選択できるようにすることが、努力義務とされました
つまり、会社に相談を持ちかけることは、制度上むしろ想定されている行動です。ワガママでも、抜け駆けでもない。まずは人事担当者に「介護に直面しています」と伝えるところから。その一言が、あとの選択肢の数を変えると大将は感じています。
一方で、会社の側も対応をどう整えればよいか分からず困っていることがあります。近ごろは、企業向けに仕事と介護の両立支援を行う専門職(産業ケアマネージャー)という仕組みも出てきました。大将もNARI+(ナリプラス)としてこの分野に取り組んでいます。
松山では、どこに相談できるか
制度の話と並行して進めていただきたいのが、介護そのものの体制づくりです。制度は時間をつくる道具、体制は日々を回す土台。松山には、頼れる窓口がちゃんとあります。
| 相談したいこと | 松山での相談先 |
|---|---|
| 介護全般・最初の一歩 | お住まいの地区の地域包括支援センター(市内13か所+サブセンター2か所。担当は町名で決まります) |
| 要介護認定の申請 | 松山市 介護保険課(TEL 089-948-6841・6925) |
| 認知症で受診や介護に困っている | 認知症初期集中支援チーム(相談は地域包括支援センター、または長寿福祉課 基幹型地域包括支援センター TEL 089-948-6949) |
| 同じ立場の人と話したい | 市内の認知症カフェ(問合せ:長寿福祉課 基幹型地域包括支援センター TEL 089-948-6949) |
| 会社が制度に応じてくれない | 愛媛労働局 雇用環境・均等室(松山市若草町4-3 松山若草合同庁舎、TEL 089-935-5222) |
地域包括支援センターは、松山市の説明によれば保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員がチームで相談に応じる、高齢者の暮らしを総合的に支える拠点です。「まだ介護保険を申請していない」段階でも相談できます。「認定が出てから行くところ」と思って抱え込んでしまう方が多いのですが、まだ何も決まっていない、で構わないんです。申請の手順は松山で介護保険を申請するには?窓口と流れに整理しています。
認知症初期集中支援チームは、松山市の案内によると、認知症の診断を受けたいが受診を拒否している方、症状が強く介護に困っている方などを対象に、医師・保健師・精神保健福祉士・主任介護支援専門員・社会福祉士などの専門職が訪問し、必要な医療や介護サービスにつなぐ取り組みです。「受診を嫌がって進まない」という、ご家族だけでは動かしにくい場面のための仕組みです。説得力が足りないのではなく、身内だからこそ動かせない。介護ではよくあることです。
認知症カフェのように同じ立場の人と話せる場があることも、知っておいていただきたいところです。制度の説明より、同じ道を歩いた方の一言に救われる日があります。
なお、日中の介護をデイサービスや施設に委ねることも、仕事を続けるための現実的な選択肢です。預ける先はプロです。知るには見学がいちばん早く、その着眼点はグループホーム見学で見てほしい5つの点にまとめています。
まとめ
- 介護休業は通算93日・3回まで分割して取れます。介護に専念するためではなく、両立できる体制をつくるための期間です
- 介護休暇は年5日(対象家族2人以上で10日)、時間単位でも取れます
- 収入面は**介護休業給付金(賃金の67%)**が支えになります。要件は雇用保険の被保険者期間などです
- 2025年4月から、会社には相談窓口の整備や個別の周知・意向確認が求められています。相談を切り出してよい制度環境になっています
- 松山では、まずお住まいの地区の地域包括支援センターへ。制度面で会社と折り合わないときは愛媛労働局の窓口があります
大将の会社は、**「快」**という一文字を真ん中に置いています。快かどうかを決めるのは、こちら側ではなく、いつもお客様のほう。だから「してあげている」ではなく「させていただいている」と考えるようにしています。
そして支えるご家族がすり減っていて、ご本人だけが快、ということは、たぶん起きません。 ご家族が仕事を続けられて、生活の土台が保たれていて、そのうえで顔を見に行ける。その形が続くことのほうが、ずっと長く効くと大将は感じています。
辞めるかどうかを決めるのは、ご家族ご自身です。大将はその判断に口を出すつもりはありません。ただ、すべてを机に並べたうえで決めていただきたい。
大将たちも松山でグループホーム・デイサービス・居宅介護支援を運営しながら、「働きながら介護を続けたい」というご相談をお受けしています。まだ何も決めていない、で構いません。見学のご相談から、どうぞお気軽にお声がけください♪
制度の要件や窓口の連絡先は変わることがあります。実際に手続きをされる前に、勤務先・ハローワーク・松山市の窓口で最新の情報をご確認ください。
出典: 厚生労働省 介護休業制度特設サイト / 同 介護休業 / 同 介護休暇 / 同 短時間勤務等の措置 / 同 所定外労働の制限 / 同 法改正のポイント / 厚生労働省 Q&A〜介護休業給付〜 / 松山市 地域包括支援センター / 松山市 認知症初期集中支援チーム / 松山市 認知症カフェ / 愛媛労働局 雇用環境・均等室(いずれも2026年7月確認)