老人ホーム紹介センターの仕組みと確認したいこと
親御さんの住まいを探し始めると、「入居相談センター」「老人ホーム紹介センター」といった窓口を目にされると思います。希望を伝えると条件に合う施設を挙げてくれて、見学の段取りまでしてくれる。しかも、ご家族の側は無料。
心細いときに、まとめて調べてくれる相手がいる。ありがたいことです。
がしかし。。。一度だけ立ち止まりたいんです。なぜ、ご家族は無料で使えるのか。
知らなければ「勧められた=良い施設」に見える。知っていれば「なぜ、この3か所なのか」まで聞ける。
紹介センターを「使うな」という話ではありません。国の検討会の資料をもとに、お金がどう回っているのかと、相談のときに聞いてよいことを並べます。
なぜ「無料」で紹介してもらえるのか
厚生労働省の「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」が令和7年11月5日に公表したとりまとめに、答えが書かれています。
紹介事業者は、入居希望者と高齢者向け住まいを結びつける役割を担い、成約したときに、有料老人ホーム側から紹介手数料を受け取るという形でお金が回っています。ご家族が無料で相談できるのは、費用の出どころが施設側だからです。
もうひとつ、知っておくと見え方が変わることがあります。同じとりまとめで、不動産の仲介とは制度上の位置づけが違うと説明されています。
| 不動産(宅地建物取引業) | 高齢者向け住まいの入居者紹介 | |
|---|---|---|
| 法律による業の規制 | ある | 仲介ではなく単なる情報提供のみを行うため、宅建業の規制が適用されないこととされている |
| 契約書・重要事項説明への押印 | 仲介会社が行い、責任の所在がはっきりする | そうしたルールは特段ない |
| 手数料を払う側 | 売主・貸主・借主など | 成約時にホーム側 |
(出典: 厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 とりまとめ」令和7年11月5日)
誤解のないように。これは「紹介事業者は信用できん」という話ではありません。とりまとめでも、紹介事業は住まい探しの役割を果たしていると書かれています。ルールがこれから整っていく途中の分野である、というだけのこと。だからこそ、仕組みを知っておくと話がしやすくなる。
なお令和2年度の調査研究事業では、入居ルートで最も多いのは「本人・家族等からの直接申込み」でした。自分で探して申し込む道も、主流のままなのです。
手数料について、国が確認したこと
令和6年秋、有料老人ホームが入居者募集の際に、要介護度や医療の必要度に応じた高額な紹介手数料を支払っていた事案が明らかになりました。これを受けた高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)の実態調査(結果の概要は令和7年9月16日の第7回検討会に提出)では、紹介事業者ごとの紹介手数料の平均額は20万円台、月額家賃の1〜2か月相当という事業者が約半数。一部に、月額家賃と比べて高額な設定の事例も確認されています。
これを受けて厚生労働省は標準指導指針を改定し、「社会保障費の不適切な費消を助長するとの誤解を与えるような手数料の設定を行わないこと・応じないこと」と明記。とりまとめは、紹介事業者に次の対応が必要だとしています。
- 自らの立場を明確に説明したうえで、中立的な立場から、正確な情報にもとづいて希望に合ったホームを紹介すること
- 成約時にホーム側から手数料を受け取ることと、その算定方法を、入居希望者に事前に書面で明示すること
- 手数料は、賃貸住宅の仲介を参考に、月あたりの家賃・管理費等の居住費用をベースに算定することが適切であること
さらに、一定の基準を満たした事業者を優良事業者として認定する仕組みの創設が有効とされ、令和8年7月29日の第8回検討会資料によれば、認定制度は令和9年度に開始する予定です。ただし、ここはまだ動いている最中の話。有料老人ホームの登録制も、政省令の公布が年内に予定されている段階で、施行日を定める政令はまだ出ていません。決まったこととして読まないでください。
今すぐ使える手がかりは、高住連の「高齢者向け住まい紹介事業者届出公表制度」です。届け出た事業者が検索でき、紹介可能エリア・契約法人数・契約ホーム数・総相談員数などが公表されています。
相談するときに、確認しておきたいこと
「こんなこと聞いたら失礼かな」と思われるかもしれません。が、遠慮はいりません。下に挙げたのは、国の検討会が「事前に書面で明示すべき」と議論している内容そのものです。
| 確認したいこと | 具体的な聞き方の例 |
|---|---|
| 相手の立場 | 「こちらの費用はどこから出ているのですか」 |
| 手数料の算定方法 | 「手数料は、どういう決め方になっていますか」 |
| 紹介先の範囲 | 「提携外の施設も候補に入りますか」 |
| 勧める理由 | 「このホームを勧めてくださるのは、どういう理由からですか」 |
| 届出の有無 | 「高住連の届出公表制度には届け出ておられますか」 |
聞いたときの答え方そのものが、いちばんの判断材料になります。すぐ答えてくれるか。書面で見せてくれるか。濁るようなら、持ち帰って別の窓口にも当たってみればいい。
紹介してもらった施設を自分でも調べてみることもおすすめします。厚生労働省の介護サービス情報公表システムなら、職員体制や研修、苦情対応の窓口を無料で確認できます。調べ方は介護サービス情報公表システム|見学前の調べ方に書きました。紹介してもらう道と自分で調べる道は、両方使えます。
入居したあと、ケアプランは誰が作るのか
住まいを決める前に、もうひとつ。入居したあと、ケアプランを誰が作るのかという話です。ケアプランは、どのサービスをどれくらい使うかを決める計画で、ケアマネジャー(介護支援専門員)が本人と相談しながら作ります。
令和8年8月5日の社会保障審議会介護給付費分科会の資料に、こんな指摘があります。
特に、併設・隣接事業所を有する住宅型有料老人ホームにおいては、入居者の多くが当該事業所のサービスを利用している状況であり、介護サービス利用を限度額一杯にしてほしいとの要請を受けているケアマネジャーも一定数いるほか、実際に、要介護度が軽度でも毎日併設の通所介護を利用している者が一定数いるといった状況が見られている
(出典: 第262回社会保障審議会介護給付費分科会 資料2「高齢者住まいに対するサービス提供の在り方」令和8年8月5日)
業態全体の話ではなく、併設・隣接の事業所を持つ住宅型有料老人ホームで見られる状況として書かれているものです。そのうえで国は、ケアマネジメントと地域生活相談を一体的に提供する「登録施設介護支援」を創設することとしました。ねらいは、資料にこうあります。
介護支援専門員が、ホームと対等な立場で、入居者本人の希望や置かれている状況、生活課題等を適切に把握し、利用者の自立支援や重度化防止に資する、利用者本位のケアプランの作成を可能にする
こちらも施行前の予定で、報酬や人員配置は令和9年度の介護報酬改定に向けてこれから議論される段階です。
制度の名前を覚える必要はありません。見学で聞いてよい質問が二つ増えた。それで十分です。
- 「入居したあと、ケアプランを作るケアマネジャーは、どちらの事業所の方になりますか」
- 「併設以外のサービスも、選べますか」
介護保険法は、保険給付が「被保険者の選択に基づき」「多様な事業者又は施設から」提供されるよう配慮して行われるべきものだと定めています(第2条第3項)。選べることが、制度の土台なんです。
松山では、どうなっているか
松山市は、市内の有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅について、施設名・所在地・電話番号・定員をまとめた一覧を公式サイトで公表しています。「高齢者向け施設選びに関するガイドブック」も同じページに。担当は指導監査課(電話 089-948-6414)です。
相談の前でも後でも構いません。一度目を通しておくと、候補の全体像がつかめます。「勧めていただいた3か所は、松山にある選択肢のうちの3か所なんやな」。それが見えるだけで、気持ちが落ち着くのではないかと思います。
もうひとつの入口が、地域包括支援センターです。松山市には13か所とサブセンター2か所が置かれ、基幹型地域包括支援センター(電話 089-948-6784)もあります(2026年7月時点)。担当地域は町名で決まっていて、一覧は市の公式サイトにあります。ここは手数料が発生しない公的な相談窓口です。すでにケアマネジャーがついている方は、まずその方へ。
介護保険をこれから申請される段階なら松山で介護保険を申請するには?窓口と流れを、在宅を続けるか施設を考えるかで迷っておられるなら在宅介護の限界、どこで施設を考えるかをご覧ください。
まとめ
持ち帰っていただきたいのは3つだけです。
- 無料で使えるのは、成約時にホーム側から紹介手数料が支払われる仕組みだから。立場・算定方法・紹介先の範囲は聞いてよい
- 国は透明性を高める方向で議論中(認定制度は令和9年度開始予定、登録制は政省令の公布が年内に予定)。いずれもまだ動いている最中
- 入居後のケアプランを誰が作るのかも、見学のときに聞いておく
施設探しは、情報の多さより「誰の立場から出てきた情報か」が分かることのほうが効きます。それさえ分かっていれば、紹介センターも公表システムも安心して使えます。立場だけ、押さえておく。
最後に決めるのは、たぶん資料ではありません。その場の空気です。玄関の匂い、職員さんの声の大きさ、すれ違った方の表情。数字にならんところに、いちばん大事なものが出ます。見学の見方はグループホーム見学、大将が見てほしい5つの点に書きました。
大将が介護の世界に入ったころ、研修で講師の方々が口をそろえたのが「快」という一文字でした。その人の今は、快なのか。そう考えることが、相手の立場に立つということなんやと思います。
快は、こちらが与えるものではありません。受け取った方の反応から生まれるもの。だから、してあげているのではなく、させていただいている。その姿勢を続けること。それが大将の約束です♪
松山近郊でグループホーム・デイサービス・居宅介護をお探しでしたら、見学のご相談をどうぞ。迷っている段階のご相談こそ、遠慮なく。
この記事の出典
- 厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 とりまとめ」(令和7年11月5日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65637.html
- 同 第8回検討会 資料3「これまでの議論の経過及びご議論いただきたい論点」(令和8年7月29日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74992.html
- 第262回社会保障審議会介護給付費分科会 資料2「高齢者住まいに対するサービス提供の在り方」(令和8年8月5日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75011.html
- 高齢者住まい事業者団体連合会「高齢者向け住まい紹介事業者届出公表制度」 https://koujuren.jp/todokede/
- 松山市「有料老人ホーム等に関する施設情報」 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/fukushi/korei/hojin/nyusho/yuuryouroujinnhome.html
- 松山市「地域包括支援センター」 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/kaigohoken/koureisyashien/shien_center/houkatsu.html